サイクルツーリズムの観光マネジメントを学ぶ
小口良平さんが主催する「grav bicycle」が運営するサイクルガイド養成スクール「grav bicycle school 2025」後編(後輪)に参加してきました。今回の後輪編には、参加メンバー16人、オブザーバー3人、スタッフ4人、自転車旅人1人の、合計25人が関わりました。grav bicycle schoolは、自転車を活用したまちづくり人材である「サイクル・リーダー」を育成することをミッションとしています。詳しくは前編のレポートをご覧ください。
後輪編では、より実践的な観光マネジメントを学ぶプログラムが中心となりました。
今回の学習テーマ
①サイクリングツアーの商品造成
②旅行業法、保険業法、その他の業法知識
③募集要項(タリフ)作成
④告知募集販促基礎知識
サイクルツアーを造成する
今回のフィールドは、長野県の諏訪湖エリアです。3日間かけて参加者を4チームに分け、それぞれのチームでオリジナルのサイクルツアーを造成しました。初日の午前中は、まず全員でモデルコースを周り、ツアーを一度体験します。午後はチームごとに分かれて諏訪湖エリアを散策し、ルート候補や立ち寄りスポットを視察しました。ツアー造成には、いくつかのルールや前提条件が設けられており、その範囲の中で各チームが自由に企画を組み立てていきます。

ツアー造成のためのサイクリング
2日目は朝からツアー造成のための戦略会議からスタートします。ターゲットやテーマ、コースの方向性などをチーム内で話し合い、大まかなプランを固めてから、実際にコースを走ってスポットを巡り、自分たちの足で「確かめる」時間に充てました。諏訪湖には、湖畔をぐるりと一周できる約16kmのサイクリングロードがあります。景色も良く、ノンストップで気持ちよく走ることができるコースです。また、諏訪大社の秋宮や春宮といった、いわゆるメジャーな観光地も点在しています。
しかし、著者のチームでは**「リピーターの観光客」**をターゲットに設定していたため、
- 諏訪湖サイクリングロード
- 諏訪大社などの王道スポット
はあえてメインに置かず、諏訪湖から少し山側に入った旧甲州街道沿いを走りながら、歴史の気配を感じられるエリアや、人があまり訪れない景色の良いコースを中心に造成しました。

観光マップアプリ「SEEKCROW」でコースを作成してみる
視察を終えたあとは、3日目の朝に予定されているツアー造成コンペに向けて、各チームごとに打ち合わせを重ねます。夜遅くまでプレゼン資料を作り込みながら、コースのテーマやストーリーを言語化していきました。せっかくなので、著者が関わっているデジタルマップアプリ**「SEEKCROW」**を使い、立ち寄りスポットとコースを実際にマップ上に落とし込んでみました。
紙の地図や頭の中だけで考えるのではなく、デジタル上でルートとスポットを視覚化することで、移動距離や時間、全体のバランスがぐっと把握しやすくなりました。

コンペで各チームが作ったツアーを評価
3日目の午前中は、いよいよコンペ本番です。各チームが造成したツアーについて、
- ターゲットに合っているか
- ストーリーに一貫性があるか
- サイクリングならではの魅力を活かしているか
など、18項目にわたる評価軸で、参加者全員が相互に採点を行いました。総合得点がもっとも高かったチームが優勝となり、午後はそのチームが作成したツアーを実際に走ってみるという流れです。著者のチームは惜しくも次点という結果でした。
優勝チームの最大の決め手は、ツアーの中に組み込まれた「鰻」の存在です。諏訪湖の名産でもある鰻は、地域の人にとってまさにソウルフード。その鰻を、しかも比較的リーズナブルに食べられるお店をスポットとして組み込んでいました。一方で、著者のチームは午後スタートのツアーを想定していたこともあり、休憩時の楽しみとして「ドーナツ」を設定。これはこれで魅力的ではあるものの、地域のソウルフードという文脈からすると、インパクトの差が出てしまったように感じました。

まとめ
全5日間にわたるグラバイスクールは、サイクルツーリズムに取り組むうえで必要となるノウハウを、ぎゅっと濃縮して学べる貴重な機会でした。
参加者は全員、「これから自分の地域でサイクルツーリズムを広げていきたい」と考える志の高いメンバーばかりで、その熱量は本当にすさまじく、しかも皆とても明るくフレンドリー。濃密な5日間でしたが、体感としては「あっという間」に過ぎていった印象です。
このようなスクールは国内でもまだ少なく、とても希少な学びの場だと感じました。 今後は、今回のグラバイスクールで得た学びを自分の現場で活かすとともに、サイクルツーリズムに関わる人たちのネットワークを、さらに広げていきたいと思います。

