Vol.9 伊藤歩さん「稲敷市サイクルツーリズムPR事業”イナシキライド”を考案」

今回は茨城県稲敷市で、自転車を活用した地域おこしに取り組む伊藤歩さん(愛称:ムーサン)にお話を伺いました。伊藤さんは長野県飯田市出身。2020年に地域おこし協力隊として着任し、ご家族で稲敷市に移住されました。

稲敷市は霞ヶ浦に面しており、ナショナルサイクルルートとして人気の「つくば霞ヶ浦りんりんロード」も通るサイクリングの好立地です。しかし一方で、サイクリストが走り抜けるだけで、地域にお金も記憶も残りにくいという課題がありました。 ムーサンはこの課題に対し、単なるプロモーションにとどまらず、休憩所の整備や清掃、サイクルツアーの造成など「地域側の受け皿」を一つずつ整備。「通過」を「滞在」へと変えるための仕組みづくりを続けています。

目次

地域おこしと稲敷のブランディング

HaNeRi
伊藤さんの経歴と、地域おこし協力隊に応募した背景から教えてください。
伊藤さん
大学で建築・まちづくりを学び、自転車ツーリングの経験もありました。前職はTVディレクターで、地域の魅力を伝える番組制作もしてきた。家族ができ働き方を考え直す時期でもあり、「これまでの経験が生きる」こと、そして「模索できる時間」になると感じて応募しました。活動時期は令和2年4月1日から令和7年3月31日です。
HaNeRi
「イナシキライド」は稲敷の自転車事業を象徴する言葉ですね。
伊藤さん
「稲敷を“乗りこなそう”」には、“RIDE=乗りこなす”の意味を込めています。自転車を軸に、稲敷の野外アクティビティを丸ごと満喫してほしい、というコンセプトです。また、稲敷市の自転車事業を共通のイメージにするために「イナシキライド」としてブランディングし、ツアー、レンタサイクル、サイクルサポートステーション、MAP、PR動画監修などに関わってきました。
HaNeRi
地域おこしでいちばん大切なことは何ですか?
伊藤さん
「「接点」をつくることです。りんりんロードの市内23キロ区間は、走っても稲敷と接点を持ちにくい現状があります。だからこそ、サイクリストと地域産品をつなぐ場をつくり、稲敷のPRにつなげる発想が重要になるかと思います。

古民家を利用した活動拠点「シロヘエ」

伊藤さんは令和4年にいなしきむすび合同会社の設立に参画し、古民家を利用した活動拠点「シロヘエ」の管理・運営にも携わりながら、自転車拠点施設の整備を進めています。

HaNeRi
「シロヘエ」は、どんな役割を担う拠点ですか?
伊藤さん
サイクリングを目的に来た人が、走るだけで終わらず、地域の人や活動と出会える“場”にしたいと思っています。拠点があることで、ツアーやイベントの集合・解散、情報提供、地域の人との接点づくりなど、地域側の受け皿が具体的になります。
HaNeRi
拠点づくりが「地域おこし」につながるのはなぜでしょう?
伊藤さん
自転車で来る人を増やすだけでは、地域に価値が残りづらい。拠点があることで、地域の資源(人・事業者・産品・体験)と来訪者をつなげやすくなり、“通過”を“滞在”に変える導線が作れます。結果として「場づくり」そのものが地域おこしの土台になります。
HaNeRi
まさに「シロヘエ」が接点の場になりますね。拠点運営にあたって意識していることはありますか?
伊藤さん
そうですね。外から来る人のためだけではなく、基本的には地域の人たちも積極的に利用してもらえるようにしたいですね。そうでないと地域の人から見ると、知らない人々が出入りするよくわからない場所になってしまいます。地域の人にも参加してもらえれば、活動の理解も進み協力をしてもらいやすくなります。12月21日には子供達がたくさん集まるクリスマスイベントも企画しています。

古民家を活用した活動拠点「シロヘエ」。古民家というとゲストハウスやカフェなどで活用することが多いですが、あえてそれとは異なった地域と外部の接点の場という新しい視点を感じます。

サイクルロゲイニングへの取り組み

HaNeRi
伊藤さんは茨城県内でサイクルイベントにも取り組んでいますね。


伊藤さん
はい。今年の6月に霞ヶ浦のりんりんポートで「おやこサイクルロゲイニング」を3月と11月に「イナシキライド・フォトサイクリング」を実施しました。
HaNeRi
どちらも自転車を使ったイベントですね。どんなイベントなのですか?
伊藤さん
エリア内のチェックポイントを自転車で巡り写真を撮ってもらいます。チェックポイントに応じて得点が与えられ、限時間内の得点で順位を競います。上位入賞者には茨城県産米(一俵=約60kg)など景品がもらえます。3月の開催では、およそ100名規模のサイクリストが集まり、稲敷市内を周遊しました。
HaNeRi
今後はこれらのイベントをどのように盛り上げていきたいですか?
伊藤さん
稲敷のサイクルツーリズムは始まったばかりで、少しずつ意識改革が進んできた段階です。これからも地域内のプレイヤーとして継続しつつ、市内に閉じず霞ヶ浦エリア、県南エリアへと幅を広げる連携も進めていきたいです。

サイクルロゲイニングについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

6月に開催されたりんりんポートでの親子サイクルロゲイニングの様子

まとめ

今回の取材を通して、地域との接点の重要性を強く感じました。観光の文脈では、いかに多くの人に来てもらうかという「外への視点」ばかりが注目されがちです。しかし、その前に地域の人々に活動を理解してもらい、参加してもらうという「内側へのアプローチ」も同時に進めることが重要だと感じました。私自身、サイクルツーリズムで各地を訪れますが、最も印象に残るのは地域の人々との自然な交流です。

自然な交流とは、演出されたものではなく、住民の方が日常の延長で無理なく関わってくれることだと思います。そのためには、地域の人々にも当事者として関与してもらうことが必要です。これは特別な観光資源がない場所であっても、どこの地域でも実現できることではないでしょうか。

おまけ:自転車で日本一周を達成した佐藤瑞さん

取材中、「グラバイスクール」で知り合った佐藤瑞(さとうみずき)さんがシロヘイに立ち寄ってくれました! 瑞さんは茨城県つくば市出身の24歳。なんと1年半かけて、自転車で日本一周をしてきたそうです。 この日は銚子から稲敷まで60km以上を走っての来訪。そして取材の翌日、ついに無事ゴールを迎えられました!次は「世界一周」を目指して準備を始めるとのこと。 瑞さんのスポンサーになっていただける方は、ぜひHaNeRiまでご連絡ください!

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