vol.3 太陽誘電株式会社「ワクワクを共有して夢の自転車を開発」

夢の自転車

「道の駅まえばし赤城」にて前橋観光コンベンション協会、太陽誘電株式会社、弊社が共同で実施しているE-BIKEの実証実験。このプロジェクトでは太陽誘電株式会社が開発した回生電動アシストシステムを活用した自転車が使われています。

今回のインタビューでは、回生電動アシストシステムの開発に携わられている太陽誘電株式会社の保坂康夫さんと村上修さんにお話を伺いました。

新事業推進室 回生システム開発 部長 保坂康夫さん

1993年に太陽誘電に入社。大学で電子回路の技術を学び、入社当時はノートパソコン用電源モジュールの設計などに従事。ソフトと回路の両方の知見を持つ担当者として、社会に役立つ付加価値の高い商品、ビジネス創出を目指す。

村上さん

新事業推進室 回生システム開発 村上修さん

2001年に太陽誘電に入社。無線モジュールの開発、生産業務に従事。それらの知見が必要とされ、新事業推進室に参加。趣味はサイクリング。

目次

回生電動アシストシステムとは

HaNeRi:開発されている回生電動アシストシステムについて教えていただけますか。

保坂:回生電動アシストシステムが備わった自転車では、走行がラクになるだけでなく、ブレーキで減速や停止する際にもモーターが速度抑制をアシストしてくれます。ブレーキで減速したり停止したりする際のエネルギーは、従来は捨てていましたが、回生システムで発電して回収することで再利用が可能です。エネルギーをリサイクルする(回生させる)ことで1回の充電で長く走れるため、環境にもやさしいシステムです。

回生電動アシストシステムの特長

HaNeRi:回生電動アシストシステムの特長について教えてください。

保坂:回生電動アシストシステムは環境に優しいだけでなく、回生ブレーキが機能することで下り坂でのスピードを抑えて安心や安全の面でもサポートします。そして、アシスト機能があるため簡単に乗れるので、高齢者を含む皆さんの運動や移動手段として使っていただき、健康増進や健康寿命延伸に役立てていただけると考えています。

実際の利用者からも「電池切れの心配が少なく、充電の手間が減るので助かる」「回生ブレーキのおかげで下り坂でも安心」「ブレーキで無駄にしているエネルギーを回収して再利用できるので環境にやさしくて気に入った」などのお声を頂いています。

普通の自転車には既に多くの方が乗っています。利便性、軽量、充電不要といった従来の自転車のよさを生かしつつ更なる価値を提供できれば、きっと多くの人の役に立てます。環境や健康の面でも優れた回生電動アシストシステムという道具を通して、持続可能な社会の実現に貢献できると考えています。

学生時代の経験が生んだ新商品開発

回生電動アシスト自転車

HaNeRi:回生電動アシストシステムの開発を始められたきっかけは何ですか。

保坂:きっかけは、自社が培ってきた電源技術や制御技術を活用し、社会に役立つ商品の創出を目指そうとする新商品開発プロジェクトチームに配属されたことです。回生電動アシストシステムを提案したのは私なのですが、実は学生時代の経験が関係しています。

中学校や高校時代に群馬・赤城山の裾野のエリアを自転車で通学していたのですが、起伏があるため上り坂はつらく、下り坂はスピードが出すぎて危ないと感じていました。当時は漠然と「自転車で坂道を登ったり下ったりするのは大変だな」と思っていたのですが、今回太陽誘電社として取り組んでいきたいプロジェクトの方向性と自転車の相性がとてもよいことに気づきました。

自転車は環境や健康の面で社会に貢献できます。回生電動アシスト自転車を展開することで、会社が目指す「社会に役立つ商品を創出する」ことと、過去の自分が抱えていたエネルギーに関する課題を解決することの両方を叶えられるチャンスだと思いました。そうなるともう、ワクワクする気持ちが止まらなかったですね。

ビジョン実現のために

業務中の様子

HaNeRi:新規事業を推進する際に、ワクワクする気持ちを持っているというのは非常に重要ですよね。プロジェクトはいつから始まったのですか。

保坂:2008年頃から開発プロジェクトをスタートし、お客様(自転車メーカー様)との協業で商品開発に取り組みました。現在では、多くの方に当社の回生電動アシストシステムを搭載した自転車をご利用いただいています。

HaNeRi:開発やプロジェクトを進めるうえで苦労されたことは何ですか。

保坂:当社回生電動アシストシステムのビジョンを実現するには、多くの仲間を集め、その力を結集する必要がありました。ビジョンを分かりやすく伝えて、社内社外を問わずに共感してくれる仲間を集めて、大きな力にしていく過程は大変でした。その際に、まずは自分が「社会の役に立ち、ワクワクする、やりがいを感じる」というビジョンをしっかり持っていることがとても大切だとも感じました。

今後の課題

回生電動アシスト自転車で走行中の様子

HaNeRi:販売開始後に課題に感じていらっしゃることがあれば教えてください。

保坂:自転車は重量が軽いことが求められます。他社製品も含め、電動アシスト自転車の軽量化が課題だと考えています。自転車のなかで一番重い部品はバッテリーですが、エネルギーを再利用できれば、バッテリーの容量を少なくし軽量化しても長距離を走行することができます。当社の回生システムの特長を活かし、更なるバッテリーの軽量化や小型化にも取り組んでいきたいです。

HaNeRi:「道の駅まえばし赤城」では回生電動アシスト自転車を使用したIoT実証実験をご一緒させていただいています。このプロジェクトの成果や課題についても教えてください。

保坂:多くの来場者が訪れる道の駅で、回生電動アシスト自転車の試乗機会を得られたことを嬉しく思います。実証実験用の自転車ではIoTの仕組みを加えて走行中の発電状況や消費カロリーなどを可視化しているので、気軽に楽しみながら効果を実感していただけます。もっと多くの方にこの取り組みを知っていただき、体験の機会を増やすことが今後の課題です。

夢の自転車が実現する電費

HaNeRi:サイトや動画で再充電不要でエネルギーを自給自足できる夢の自転車について紹介されています。今後の回生電動アシストシステムの開発や展開の計画について、可能な範囲で教えていただけますか。

保坂:まずは最大航続距離1000kmの性能を実現できる回生電動アシストシステムの商品化を進めています。これにより、充電作業の手間が省けたり、バッテリー切れの不安が解消されます。将来的にはエネルギーを自給自足できるようにして、充電作業もいらない、簡単・便利に使える回生電動アシストシステムの提供を目指します。

村上:ガソリンの燃費だとkm/lという単位が使われ、燃料1リットルあたり何km走行できるかを示しますが、電気の場合は電力消費率である「電費」で表します。例えば単位がkm/Whの場合は、1ワットアワーで何km走行できるかを示します。

現行の回生電動アシスト自転車も回生しない自転車と比較して倍以上の電費でしたが、次世代の最大航続距離1000kmの自転車では更なる電費を実現させる予定です。

電費とは?
電力量あたりの走行可能距離を表す電力消費率。
電力量の単位である「kWh(キロワットアワー)」や「Wh(ワットアワー)」を使って表現し、単位が「km/Wh」の場合は「1Whの電力量で何km走行できるか」を示し、数字が大きいほど性能が高い。

計算式 電費(km/Wh) = 走行距離(km) ÷ 電力量(Wh)

電費の比較
回生しない一般の電動アスシト自転車:0.23km/Wh
現行の回生電動アシスト自転車: 0.55km/Wh
次世代の回生電動アシスト自転車(最大航続距離1000kmの性能):3.47km/Wh

最後に

HaNeRi:回生電動アシストシステムの更なる進化を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

保坂:回生電動アシストシステムには、ユーザーや走行に関するデータを有効活用して、環境、健康、観光、安全などの分野で更なる価値提供をできる可能性がまだまだあります。新たな社会価値を創出するべく、引き続き共感してくれる仲間と力を合わせてチャレンジしていきます!

貴重なお話をありがとうございました!
社会に役立つ商品の創出を目指し、「環境と人にやさしい、安心安全な New Mobility」として回生電動アシストシステムの開発に取り組まれている太陽誘電さん。
業界トップクラスの省エネ・安心・安全を実現して事業化を達成した背景には、ワクワクやビジョンに共感した仲間との共創がありました。
イー・フォースもワクワクを共有する仲間として、一緒に更なる価値提供に取り組みたいと思います!

★太陽誘電さんの取り組みについて気になった方へ

環境と人にやさしいNew Mobilityを実現する回生電動アシストシステムの説明はこちら(動画)
回生電動アシストシステムについてのコラムはこちら

「道の駅まえばし赤城」でレンタルできる回生電動アシスト自転車についてはこちら(チラシ)
「道の駅まえばし赤城」での回生電動アシスト自転車を使用したIoT実証実験についてはこちら

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