サイクルツーリズムとは?楽しみ方やメリット、自治体の取り組みなどを紹介

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2016年12月に公布された自転車活用推進法や、この理念法に基づいた2018年6月の自転車活用推進計画の閣議決定をきっかけに、国が地方自治体や民間と一緒に「環境」「健康」「観光」「安全」の4つの分野で自転車の活用を推進していくこととなりました。

そして2021年5月には第2次自転車活用推進計画が閣議決定され、「自転車交通の役割拡大による良好な都市環境の形成」、「サイクルスポーツの振興等による活力ある健康長寿社会の実現」、「サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現」、「自転車事故のない安全で安心な社会の実現」の4つが掲げられています。

本記事では「サイクルツーリズム」について、メリットや取り組みを紹介します。

目次

サイクルツーリズムとは

サイクルツーリズムは主に自転車を利用した観光を指しますが、いろいろな楽しみ方があります。

サイクリングイベントに参加する

「サイクリングしまなみ」のように参加者定員が数千人規模になるものをはじめ、数百名規模のものなど、全国各地でさまざまなサイクリングイベントが開催されています。

初心者やライト層も参加しやすいように、複数のコースが用意されているイベントも多くあります。

内容も、順位やタイムを競うロードレースだけでなく、サイクリングをしながらチェックポイントで写真を撮影するロゲイニング、走った距離が寄付金になるチャリティ、コース内のスイーツ店や観光スポット巡るスイーツライドなど、さまざまなものが開催されています。

企画やツアーに参加する

旅行会社や現地のガイドが主催するツアーで、サイクリングしながら観光を楽しむ方法もおすすめです。
ガイドが効率よくスポットをまわれるようにコース案内してくれ、ガイドブックだけでは手に入らない情報も教えてもらえることがあります。

レンタサイクルで地域を散策する

レンタサイクルとサイクリングロードが整備されているエリアであれば、自身の好きなタイミングで自由に地域をまわることができます。

細かな予定は決めずに、気に入った場所でゆっくりしたり、サイクリング中にたまたま見つけた飲食店で食事をするなど、スケジュールを柔軟に変更しながら旅をすることができます。

サイクルツーリズムが期待される背景

サイクルツーリズム

観光庁が発表した「訪日外国人消費動向調査 2023年7-9月期の全国調査結果(1次速報)の概要」でも見られるように、外国人旅行者のニーズが「モノ消費」から体験型観光の「コト消費」へ変化しています。

また、日本政府観光局(JNTO)の「日本の観光統計データ 都道府県別訪問率ランキング」では、観光・レジャーでの訪問が東京や大阪といった都市部に集中していることが確認できます。

インバウンド効果を全国へ拡大するためには都市部以外にも訪問・滞在したくなるようなコンテンツが求められ、都市部とはまた違った景色や体験を提供できるサイクルツーリズムには期待が集まっています。

サイクルツーリズムのメリット

観光に自転車を活用することは、観光客や観光地にとって複数のメリットがあります。

健康的な旅行ができる

自転車を漕ぎながら地域をまわることで、その季節ならではの自然の景色、音、香り、風や光などをよりリアルに感じることができます。同時に運動不足も解消でき、お腹を空かせることでよりいっそう食事も楽しめます。普段よりも五感を使う観光体験は、その満足度もひとしおに高くなるはずです。

そして観光客の満足度が高まれば、知人や友人におすすめしてくれたりと、その観光地のファンが増える可能性も高まります。

移動の自由度が高い

徒歩よりも広範囲をまわることができ、車では通りにくい場所にも気軽に立ち寄れます。気に入った場所でゆっくり写真を撮ったりと、好きなペースで観光することが可能です。また、自転車であれば駐車場を探す心配も不要です。

また、自転車で移動する観光客は、車で移動するよりも各エリアやスポットでの滞在時間が長くなることで消費金額が多くなる傾向があり、観光地側の経済的メリットもあります。

環境に優しい移動手段

2020年10月、政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」として、カーボンニュートラルを目指す宣言をしました。移動手段に排気ガスを出さない自転車を移動手段とすることは、個人レベルでも比較的簡単に取り組める方法です。

また観光地側としても、観光客が増えても交通渋滞の発生を抑えることができます。

新たな魅力の発見

移動における自由度の高さから、有名な観光スポット以外にも魅力的な場所を発見できるケースがあります。地域の人たちが認識していない新たな魅力がサイクリストにより発掘され、そこが新たな立ち寄りスポットになった事例もあります。

サイクルツーリズムの取り組み例

国や自治体を中心に、サイクルツーリズム推進の取り組みが進み始めています。

ナショナルサイクルルート制度の制定

自転車活用推進法に基づくサイクルツーリズム推進において、新たな観光価値の創造と地域創生を目的に、国が一定の水準を満たすルートを「ナショナルサイクルルート」に指定しています。

ナショナルサイクルルートとして指定されるためには、ルート設定、走行環境、受入環境、情報発信、取組体制の要件を満たしている必要があります。

そのため、ナショナルサイクルルートの指定を受けることができれば、魅力的で安全なルートであることやサイクリストへのサポートが充実していることなどのPRにもなり、そのエリアやサイクルルートのブランド価値の向上が見込めます。

サイクルトレインやサイクルバスの拡大

サイクルトレイン

自転車を分解せずそのまま搭載できるサイクルトレインやサイクルバスは、自転車活用推進法及びそれに基づく第2次自転車活用推進計画などで実施の検討を促されるなど、拡大が期待されています。

サイクルトレインやサイクルバスが整備されれば自転車を分解する必要がなくなり、降車したあとは目的地に向かってすぐに移動を開始できます。

サイクルトレインやサイクルバスはその利便性によって新規顧客が増えるケースも多く、群馬県の上毛電気鉄道では導入した直後に自転車持込者が急増し、その数が年間で40,000人以上となる利用促進効果に繋がっています。

自治体にとっても、集客力が上がって目的地や沿線エリアでの消費が増える、駅周辺などに輪行のために設けていた自転車の組立・分解スペースを削減できるなどのメリットがあります。

参考:国土交通省「サイクルトレイン・サイクルバス導入の手引き~国内外の参考事例集~令和4年度版」

サイクリング大会の実施

サイクリング大会

しまなみ海道サイクリングロードを堪能できる「サイクリングしまなみ」などをはじめ、全国各地でサイクリング大会が開催されています。

サイクリングしまなみ

普段は自転車が走ることができない高速道路をサイクリングできる、国際的にも人気の大会です。初心者が楽しめるコースも用意されており、家族みんなで楽しむことができます。

「サイクリングしまなみ」の詳細はこちら

淡路島ロングライド

アワイチ(淡路島1周)をしながら150kmを駆け抜け、その楽しさと手強さを味わえる大会です。いくもの難関があるため「リタイア推奨地点」というポイントが設けられており、リタイア希望者は専用のバスに乗ることができます。

「淡路島ロングライド」の詳細はこちら

赤城山1周ライド

赤城山の裾野約100kmを1日で走破するロングライドイベントです。 雄大な景色やスポットでの補給食を楽しみながら赤城山1周を目指します。2023年のイベントでは初心者向けの約30kmのショートコースも登場し、幅広い層に参加いただける取り組みもはじまっています。

「赤城山1周ライド」の詳細はこちら

まとめ

地域経済、環境、健康、交通などの面でさまざまな課題を抱える社会において、サイクルツーリズムはひとつの大きな解決策になっていく可能性があります。

2023年11月現在、自転車に関する法令や文化の普及はまだ途上ですが、サイクルツーリズム推進のためにサイクリスト向けの対応を進める自治体も増えてきています。今後、サイクルツーリズムがますます幅広い層で盛り上がりをみせそうです。

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