サイクルツーリズムの現状と地域が直面する共通課題
近年、健康志向の高まりや観光の多様化により、日本各地でサイクルツーリズムの注目度が高まっています。多くの自治体が電動アシスト自転車(E-BIKE)やシェアサイクルを導入し、地域回遊の促進を図っていますが、「予算をかけて導入したものの、期待したほど効果が出ていない」という共通課題に直面しています。
※詳細については国土交通省のシェアサイクルの公共的な交通としての在り方についてや(一社)長野県観光機構による長野県サイクルツーリズム実態調査が大変わかりやすくまとめられています。
「期待したほど効果がでない」背景としては、主に以下の3つの共通課題が挙げられます。
① 収益性・採算性の課題
高コスト体質
・ 自転車の購入・維持・再配置、盗難対策、人件費など運営コストが高い一方、レンタル収入のみでは採算確保が難しい。
・観光振興のために自転車に適した観光マップの更新やイベントを行いたいがリソースが不足している。
収益源の不足
・ レンタル以外の収益(地域店舗との連携、ツアー、広告収入など)が確立できず、安定運営の基盤が弱い。
・補助金を活用して実現したものの、支援期間が過ぎた後に同一のサービスを維持できず打ち切られてしまう。
② 観光回遊性の課題
ルートの未整備
・ ポートが主要駅周辺に限られたり、告知不足により旅行者に分かりにくい。
・地域ならではの魅力を巡る推奨ルートが未整備であり、車や徒歩移動の観光コースと一緒になってしまっている。
情報発信の不足
・「どこを走れば満足できるか」「立ち寄りスポットはどこか」「そもそも自転車で通れるのか」などの情報が十分に届かず、利用が伸び悩む。
・車移動が主な地域では「自転車をわざわざ利用する意味」をアピールする必要があるが訴求が弱い。
③ 運営ノウハウと安全管理の課題
ノウハウ不足
・ 地域コーディネーターやサイクルガイドが不足し、地域全体を巻き込んだ運営体制が未成熟。
安全情報連携の遅れ
・ 山間部では落石・積雪による規制や野生動物情報がリアルタイムで共有されず、事故リスクが課題。
事例:E-BIKE導入で課題に直面した宿泊施設の挑戦
ある自然豊かな観光地のホテルでは、E-BIKEを導入したものの、共通課題に加えて宿泊施設ならではの特有の課題が重なり、稼働率が伸び悩んでいました。
主な課題と状況
| 課題 | 具体的な状況 |
| ① 安全リスク | 道路規制・自然災害情報が走行中の利用者へリアルタイムに伝わらない |
| ② 回遊性不足 | 車移動が主で、隠された地域の魅力に気づきにくい 走行データが取得できず、どの場所が喜ばれるのか施策検討が困難 |
| ③ 運営の持続性 | 観光情報発信や地図更新などの作業負担が大きく、人的リソースに依存 |
宿泊施設ならではの課題
前提条件として、ホテル所有の自転車は備品であり、「宿泊者専用」で導入しています。保険・賠償・管理体制も「宿泊者前提」で設計されているため、自治体や観光協会が運営するシェアサイクルとは違い、地元住民や通勤者に利用を促すアプローチはできません。そのため、自転車を利用するメリットをより強くお客様に訴求する必要があります。従来から観光地であったため、接客ノウハウは蓄積していますが、以下の点が課題としてあがりました。
- リソース不足でE-BIKEのメリットを活かす魅力的な走行ルートの整備が追いつかない
- 車移動が主な土地なので、「自転車で走る」 ストーリーづくりが必要
- 駅のレンタサイクルと比べ、利用への心理的ハードルが高い
- 宿周辺の広域連携は可能だがフットワークは重め、手軽に情報を反映させたい
- 宿スタッフのおすすめスポットを掲載した自転車観光マップが欲しいが紙媒体だと更新が大変
こうした課題を受け、そのホテルでは自転車観光マップのデジタル化に着手しました。デジタル化にあたり、パートナー選びが重要となります。
そこで提案したいのが、HaNeRi の観光プラットフォーム「SEEKCROW」 です。
SEEKCROWとは?
SEEKCROW は、観光の担い手(自治体・宿泊施設) と 観光客 が情報や体験を共有し、地域の魅力を循環させる観光プラットフォームです。

観光の担い手側は Web ブラウザで管理し、観光客はアプリを使用します。
管理機能(Webブラウザ)
観光情報を簡単に作成・発信
- デジタルマップ作成
- 観光スポット・イベント・音声ガイドの登録
- 推奨走行ルート作成
メリット
- 運営負担を軽減
紙のパンフレット作成が不要になり、コスト削減に貢献 - リアルタイムの安全情報を配信
道路規制や災害情報などをマップで共有し、事故リスクを低減 - 回遊性アップによる地域経済効果
走行ログをサイクリングイベントや特別ガイドに活用し、滞在時間の延長に寄与 - 走行データの可視化
人気ルートや滞在時間を分析し、次の観光施策の根拠にデータ化
観光客向けアプリ
SNSライクな情報共有
- 写真や走行ルートをシェア
- 隠れスポットや走りやすい道など“生きた情報”が蓄積
主な機能
- スポット紹介
- デジタルアルバム
- 投稿機能
- サイクルモニター
※アプリの使用方法についての詳細はこちらをご覧ください。
SEEKCROWのポイント
1.地図をアプリ化し、人手に頼らない運営を実現
2.推奨ルートを明確に表示でき、観光客に安心感を提供
3.アプリ活用で回遊性・滞在時間を向上
4.安全情報の配信で事故リスクを低減
5.走行データの可視化で次の観光施策を立てやすい
宿泊施設での導入例(AMBIENT 蓼科ホテルの例)
HaNeRiは、AMBIENT蓼科ホテルさん、丸石サイクルさん(以下敬省略)と実証実験を行いました。AMBIENT蓼科ホテルは女神湖ほど近くの閑静な地に建つ高原リゾートです。長野県の蓼科・女神湖エリアは坂が多く、車移動主体の観光地です。高原だからこそ美しい風景を拝めるのですが、エリアの周遊は徒歩では遠い/通常の自転車だとちょっと不安/車ならすぐという距離感です。丸石サイクルの「Re:BIKE(リ・バイク)」とSEEKCROWとのコラボで、漠然と「遠い」不安から出かけたくなるワクワク感へ、お客様の印象のギアチェンジを図りました。ロケーションを活かした例としても参考になるかと思います。
1000km走行可能な電動アシストつき自転車
AMBIENT蓼科ホテルで活躍している自転車は、丸石サイクルの1回の充電で最大1,000km走行可能な電動アシスト付き自転車「Re:BIKE」です。 Re:BIKEには、坂道やブレーキ時に発電する回生機能が搭載されており、長距離サイクリングも安心して楽しめます。USBアダプタをバッテリーに接続することで、スマホの充電に活用できる仕様です。SEEKCROWで自転車の走行ログを取る際もスマホのバッテリー残量を気にせず動かすことができます。

地域連携マップをデジタル化
紙地図の更新負担を解消し、広域エリア(女神湖・蓼科牧場・白樺湖・霧ヶ峰)まで網羅しました。

E-BIKE専用の魅力的なルートを作成

初心者〜サイクリスト向けまで複数のルートを設定し、「どこを走ればいいのか」「どの景色が見られるか」を可視化しました。
宿スタッフのおすすめスポットを掲載した自転車の観光マップをデジタル化し、管理機能で手軽に編集できるようになったことで、宿泊ブランとの連携もスムーズになります。例えば、健康づくりやリフレッシュを打ち出した「朝の爽快サイクリングつきプラン」、美しい景色をめぐる「秋の白樺湖周遊 E-BIKE ツアー」「チェックアウト後 2 時間乗り放題(牧場の絶品ソフトクリームつき)」など予めプランとして組み込むことで、宿泊者に自転車旅という滞在ストーリーとワクワク感を提供することができます。
まとめ:データと安全を基盤にした持続可能なサイクルツーリズムへ
レンタサイクルは導入しただけではなかなか稼働しないことが課題ですが、 「使う理由」を明確に提示すると大きく変わります。しかしながら、少人数で運営している観光案内所や道の駅、宿泊施設などではリソースが限られているため、可能な部分は効率化させながら有効にアピールしていく必要があります。SEEKCROW の強みは、単なる観光アプリではなく、地域の採算性・回遊性・安全性の課題を同時に解決のお手伝いができる「データ基盤」であることです。E-BIKE導入だけで終わらせず、「安全」と「データ分析」を軸とした持続可能なサイクルツーリズムを構築してみてはいかがでしょうか?
HaNeRiではさまざまな自治体、地域観光協会、バイクツアー運営団体、自転車メーカー、シェアサイクル事業者、地域企業とパートナーシップを結び、さまざまなサービスを提供していきます。観光サービスDX化にご興味のある自治体様、自転車にIoT機能を付けて新たな価値を提供したいメーカー様など、パートナーを随時募集しています。HaNeRiの活動にご興味がありましたら、ぜひお気軽にご連絡ください!


