vol.2(前編)前橋観光コンベンション協会「赤城山の坂の多さを『E-BIKEを楽しめるルート』という強みに」

コンベンション協会様

2023年8月にリリースしたスマホアプリ「AKAGIサイクルスタンプラリー」。このアプリは、公益財団法人 前橋観光コンベンション協会様と一緒に作成しました。

今回のインタビューでは、サイクルツーリズム事業に携わられている藤田朱美さん、寺田絢哉さん、鈴木雄祐さんにお話を伺いました。

公益財団法人前橋観光コンベンション協会
誘客創造課 課長 藤田朱美さん(写真右)
前橋市への観光誘致戦略立案や観光案内所の運営に携わるプレイングマネージャー。

誘客創造課 主事 寺田絢哉さん(写真左)
ウォーキングイベントなどの運営をしながら観光振興事業に従事。

誘客創造課 主事 鈴木雄祐さん(写真中央)
桐生市出身。2019年から約3年間、前橋市の地域おこし協力隊として活動。2022年4月より現職。前橋花火大会の運営やサイクルツーリズムに関連する業務を担当。

目次

自転車のまち前橋と赤城山

HaNeRi:赤城山のある前橋市は、日本有数の自転車のヒルクライム大会の開催や、シェアサイクルやE-BIKE(電動アシスト付自転車)の貸し出しなどを実施されていて、「自転車のまち」として力を入れていらっしゃる印象です。サイクルツーリズムに関する歴史を伺えますか。

藤田:現在は、2021年まで観光地域づくり法人(DMO)として活動していた特定非営利活動法人 赤城自然塾の赤城山ツーリズム事業が当協会に事業移管された形ですが、事業移管を受ける前は前橋の街中と郊外の赤城山エリアでそれぞれ別々に活動していました。

市内では平成11年頃から前橋駅で貸し借りができるレンタサイクル事業を行っていましたが、時代の変化に合わせ現在はシェアサイクルに変わっています。

ただ、現在当協会の運営しているE-BIKEレンタルは予約すれば1日中自由に使えますが、シェアサイクルだと在庫の不確実性があることや、アプリのダウンロードが必要というハードルがあります。その点、旅行者からすると事前に予約可能なサービスは便利で、移動手段やアクティビティとして一定のニーズがあります。

さらに、自転車で広域を周遊するという、前橋市だけでなく赤城山を囲む複数の自治体と連携する新しいアクティビティを赤城自然塾さんがスタートされました。現在のように複数の自治体が連携してサイクルツーリズムを進めようとする動きは、このときの赤城自然塾さんの活動がきっかけになっています。

サイクルツーリズムへの取り組み

ヒルクライム

HaNeRi:協会さんが運営されているサイト「前橋まるごとガイド」ではサイクリスト向けのコンテンツも充実していますよね。サイクルツーリズムで取り組まれていることを教えてください。

鈴木:赤城山はヒルクライムを開催しているのがひとつの大きな特徴かと思います。険しい坂道を登る「まえばし赤城山ヒルクライム大会」は歴史があります。

藤田:SF小説家の高千穂遙さんが自転車がお好きで、ヒルクライムの小説を書く際に、作品の舞台として赤城山を選ばれたんです。その時はまだ赤城ではヒルクライムを開催しておらず、その作品が発表された後に小説のシーンを実現しようと、赤城山でのヒルクライムがはじまったという歴史があります。

赤城山は富士山に次いで裾野が長いと言われており、春から秋にかけてはヒルクライムコースはもちろん、さまざまなエリアで毎日、特にヒルクライマーの方が山を登っています。このように日々サイクリストが訪れる町になれたことは当協会としてとても喜ばしいです。

ナショナルサイクルルートの指定を目指す

HaNeRi:これから実現させたい取り組みはございますか。

鈴木:前橋市としては、赤城山を取り囲むエリアがナショナルサイクルルートに指定されることを目指しています。赤城山は坂が多いですが、一見欠点になってしまうその部分を「E-BIKEを楽しめるルート」という強みにするため、事業を開始した赤城自然塾ではクラウドファンディングなども活用しながら予算を集めてBESVというE-BIKEを10台導入しました。またその後GIANTや、この春からは回生式のE-BIKE「TB1e」やファットバイクタイプのE-BIKEを導入しました。

BESVはスタイリッシュで乗りやすい車種でもあるので、本格的なサイクリストだけでなくライト層にも活用いただければと思います。

藤田:赤城山エリアは各スポットの間に距離があるケースが多いので、それらをまわる移動手段としてE-BIKEを活用いただければと思います。

また、ナショナルサイクルルートには広域をまわってもらいたいという趣旨があります。地域の食を楽しみながら、約100kmにおよぶ赤城山の裾野を1日で走破してもらう「赤城山1周ライド」というロングランイベントを開催しているのですが、そのイベントでは広域連携というテーマを掲げて地域間の連携をし、また同エリアではサイクリストのためのおもてなしスポットである「AKAGI Cycle Oasis <あかぎサイクルオアシス>」を約100箇所設けています。

サイクリストを魅力する赤城山

鳥居峠

HaNeRi:盛り上がりを見せている赤城エリアのサイクルツーリズムですが、どのような点がサイクリストを魅了しているのでしょうか。

藤田:百名山のひとつであることと、関東平野を見渡せる貴重なロケーションということもあり、絶景好きの方には一度は訪れたい場所と認知していただけているようです。

鈴木:鳥居峠からは眼下に雲海が見えることもあります。

藤田:交通渋滞が発生する時期だと、普段から体を動かしている人は運動がてらにE-BIKEでの移動を選択される方もいます。赤城エリアはスポット間で距離があるのである程度の距離を漕ぐ体力は必要ですが、普段から10km程度のウォーキングをしている方であれば、すぐに目的地に到着するよりもちょうどいい負荷で移動をお楽しみいただけるかと思います。

HaNeRi:前方に榛名山、後方に赤城山が見える道を走ったことがありますが、川や桜を楽しめる絶景でした。

藤田:ありがとうございます。車で移動される方だとなかなか気づかれませんが、自転車で移動される場合はそういった景色を楽しみながら移動していただけるのもポイントだと思います。

vol.2(後編)前橋観光コンベンション協会「データを活用しながらレンタサイクルを盛り上げたい」に続く)

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